こんにちは,元機械班の20-Samejimaです.
前回(設計・製作編)は,ロボットを運ぶ時の振動を吸収する「除振台車」の設計と製作の様子を紹介しました.
今回は,完成した除振台車をご紹介します!
そして,その性能は...?
除振台車2号機完成
設計・製作編でお話したように,組み立てを進め,ようやく台車が完成しました!
完成したのは2023年10月.除振台車プロジェクトは実に1年近く細く長く続きました.やはり,時間をかけて作ったものが形になるとうれしいですね!
完成した除振台車2号機がこちら↓
ハンドルとキャスターの一部は既製品ですが,それ以外は部室にあったものを基本的に使っています.
個人的には,木材と金属が共存している見た目がお気に入りです.
横から見るとこんな感じ↓
(背景ごちゃごちゃですいません…)
割と車高は高めになりました.
本当に除振されているのか??
本当に除振されているのか,おもりを載せて,動かしてみました.
その感想は…
なんと,細かい振動が取り除かれて,滑らかに動いているではありませんか!!
点字ブロックやマンホールなど,今まで大きな振動を受けていた路面上でも,ほとんど振動せずに進みます.音を聞いたら,点字ブロックなどの上を通ったなと分かるのですが,ハンドルを握っている手にはあまり振動が伝わってきません.
1号機で問題となっていたばねが外れる問題や,縦置きした時に除振の機構が飛び出してしまう問題もしっかり解決できました.
まだ実際のロボットへの長期的な影響は見れていないですが,ねじが緩まない効果も期待できそうです!
計測してみると...
除振できた!とは言っても,本当に振動を吸収しているのでしょうか.気になった筆者は,スマホアプリで振動を計測してみました.(スマホで振動を計測できるなんて便利な世の中ですね.)
計測したデータをパソコンでグラフにした結果が下の2つのグラフです(左側が普通の台車,右側が今回作った除振台車のグラフ).
ざっくり見方を説明します.横軸は振動の周波数(振動の細かさ)を表していて,右に行くほど細かい振動を表します.縦軸は,周波数ごとの振動の強さを表していて,値が大きいほどその周波数で大きく揺れることを意味します.
要は,グラフの山が低ければ低いほど振動しない台車ということです.
グラフを見ていただくとわかるように,普通の台車(左)だと40Hz付近にあった大きな山が,除振台車(右)だとごっそり削り取られて,山の高さも低くなっています.10Hz以上の振動を減衰させるという目標は達成できてそうです.
感覚だけではなく,こうしてグラフでも除振できていることが分かると一安心です.
(固有振動数をご存じの方へ)
右側(除振台車)のグラフを見てみると,5Hz付近にピークがたっているのが分かります.普通の台車だとこのようなピークは無いので,これがこの台車の固有振動数だと考えられます.グラフを見ると,こんなこともわかって面白いですね.
ちなみに振動計測に使ったアプリは「Physics Toolbox Suite」というアプリです.今回は振動(正確には加速度)を測りましたが,磁力や音の大きさなどいろんなものを測れる便利なツールです.(別に会社の回し者でも何でもないですが,)面白いのでぜひ使ってみてください.
まとめ
完成した除振台車2号機は,いかがだったでしょうか.
2号機を作るのにかかったお金は1万5千円くらいだったので,市販されている除振台車よりも安く作れたと思います.その点も満足です.ただ,だいぶ複雑な設計にしてしまい,加工と組み立てがかなり量産向きではないので,もし3号機を作るならもっと作りやすい設計にしたいと思いました.
と同時に,市販されている普通の台車はなぜこんなにも安く作れるのか(1万円もいかないものが多数)と,ひしひしと感じました.量産の力ってすごいです(量産できるような設計を作る人たちも).
除振台車の製作を通して,機械力学や材料力学を思い出し,新しい材料の加工などいろいろと経験できました.また,除振について考えすぎた結果,今では自動車などのサスペンションについ目が行ってしまう様になりました.交差点で信号待ちしているときに,車のサスペンションが動くのを見てひとりニヤニヤ(^-^)しちゃいます.←もうほとんど病気憑りつかれちゃってますね...
そんなこんなで出来上がった台車,ロボットのように表に出ることは無いですが,こんなこともやっているんだなと知っていただけたら幸いです.
以上,ロボット製作とは一味違う除振台車の製作記事でした.最後までご覧いただきありがとうございました!
オマケ:振動計測のために台車にクランプされるかわいそうなスマホ