分解できる基板タワー用スペーサの開発

皆さんこんにちは、2018年度入学機械班だったたくぽんです。

今回は昨年開発した、回路周りの便利グッズ「分解できる基板タワー用スペーサ」を紹介したいと思います!

開発経緯

ロボットを動かすには、モーターを回すための回路基板であるモータードライバーが必要です。Maquinistaのモータードライバーは基板1枚でモーターひとつを制御する仕様なので、ロボットを走行させるための足回りだけで4~8枚くらい使うことになります。

サイズ制限のあるロボコンのロボットにおいて、回路を搭載するためのスペースは限られています。そこで、たくさんの基板を省スペースに収めるために、市販のスペーサを用いて回路をタワー型に積み上げて機体に搭載していました。

市販スペーサを用いた足回り用の4段モータードライバータワー

タワー型は占有面積が小さくて便利ですが、ひとつ大きな問題がありました。それは、(特に下の方の)基板の交換がとても大変だということです。

ねじを緩めてタワーを解体しないと基板の交換ができないため、時間と労力がかかる作業になります。そもそも基板が不調で交換しないといけないときは大体修羅場なのでそんな時間はありません。

ということで、任意の段を簡単に外せるような基板タワーを開発することになりました。

開発コンセプト

一番はじめに思いついたのは引き出し型の構造でした。HDDのブラケットみたいな、タワーの好きな段の基板を引き抜いて交換できると構造だと便利そうとの着想でしたが、”引抜しろ”が必要な関係で占有スペースが大きく没となりました。

最終的には、これまでのタワー型から構造を変えず、既製品のスペーサを置き換えるような自作スペーサを作ることにしました。基板を上に引き抜く形でタワーを分解できる構造になります。

設計・製作

ツメのついた部品、スリットの入ったノブ付きの部品の大きくふたつの部品でできた構造になりました。ノブのついてる方の部品をひねることでツメがスリットに引っかかって抜けなくなります。

 

スペーサーの断面図

細かい造形が多くなってしまったので、スペーサに使用した部品は光造形の3Dプリンタで製作しています(ABSライクなタフレジンを使用)。NHKロボコン2021にはこのスペーサを用いた機体が参加しました。

スペーサ構成部品: 3Dプリント部品ふたつ,巻ブシュ,M3-15mmねじ

このスペーサは「分解できる基板タワー」という要求は満たしていたのですが、ツメが割れてロックがかからなくなったり、スロットが広がってダメになったりする事例が多発したため強度の向上が必要となっていました。その他いくつか改善点も見つかったので、強度の向上と合わせて改良版を製作しました。

改良・完成

強度だけでなく、使用感を向上させるための色々な変更を加えた最終形態がこちらになります。

ノブを回した時の「パチッ」という音・感触が良いですね。

変更点

  • 構造を変更して強度UP

    ツメが通過する部分をスリットから溝に変更し、部品の切れ目を無くして強度を向上させました。

    スリットから溝へ変更
  • ノブのロック機能の追加

    ノブをひねる際に小さな出っ張りを乗り越えるようにし、振動等でノブが勝手に回らないようにしました。

    ノブの回転にロック機能を追加
  • ガタつきを軽減

    溝が若干斜めになっており、ノブをひねると部品間の距離が縮まるようにしました。これによってノブをひねって固定したときに部品間の隙間が無くなり、タワーにしたときのガタが小さくなります。

  •  FDM式の3Dプリンタで生産できるように細かい形状を見直し

    光造形でしか作れないような細かい形状を無くし、FDM方式の3Dプリンタでも造形可能な形に変更しました(部品はAdventurer3でABSフィラメントを用いて作っています)。この変更でコストパフォーマンスや量産性が大分良くなりました。

    量産されるスペーサ部品たち

おわりに

中々いいものを作ることができて、自分でもかなり満足しています。開発の規模としては小さいですが、こういうQOLを向上させる類のものも作っていて楽しいですね。それではまた!

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